初めて会社設立をする際は、色々と進めていくうちに「この作業はことで合っているのだろうか」「不足しているものはないか」などの不安が多く出てくるのではないかと思います。
作業によっては「自分で手続きするよりも、会社設立代行業社や専門家に依頼したほうが良いのでは」と思うこともしばしばあるでしょう。
今回は、そういった不安や疑問を解消するべく、会社設立はそもそも代行業者に依頼できるのか、代行費用は自分で手続きする際とどのくらい違うのかという疑問をはじめ、会社設立代行ができる専門家や会社設立代行業者を選ぶ際のポイントまで詳しく解説していきます。
そもそも会社設立の代行は依頼できる?
会社設立をする際に、登記するために必要な書類と、登記申請書に必要な添付書類の把握はできていますか?
登記するために必要な書類は「登記申請書」「登録免許税の収入印紙を貼付した台紙」「登記すべき事項」「定款」「取締役の就任承諾書」「払込証明書」「印鑑届出書」の7種類です。
さらに登記申請書には次のような添付書類が多くあります。
- 定款
- 発起人の同意書
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及びその附属書類
- 払込みを証する書面
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
- 委任状
こうした全ての書類を広げると「これから全部自分でやるのか……」と嫌になってきませんか。
事実、会社設立の作業や手続きは貴重な経験にはなりますが、非常に複雑で、全てを経営者1人でやるのは現実的ではありません。
あらゆる書類に目を向けて手続き方法を把握するには、専門家の知識が必要となることもあるのです。
そのためほとんどの経営者は会社設立をする手続きを、会社設立サポートを行っている専門家に依頼しています。
会社設立の代行費用は格安で自分で手続きするより安い?
会社設立には次のような費用がかかります。
- 定款認証手数料
- 定款用収入印紙代
- 登録免許税
他にも細かい諸費用はありますが、上記だけで20万円から25万円ほどの費用がかかってしまうのです。
電子定款にすると収入印紙代は削れますが、その分国が指定したソフトやICカードリーダライタなどの導入が必要となり、結果的に紙で定款を作るよりも費用が多くかかってしまう可能性があります。
会社設立の代行を専門家に依頼する際に電子定款で依頼することも可能で、その場合は指定ソフトなどはすでに専門家が所持しているので、依頼料はかかりますが当然手間は大幅に削減します。
その依頼料を代行手数料と言いますが、法律の専門家に依頼するということは、当然代行手数料も決して安いと言える金額ではありません。
しかしながら手続きの方法によっては、自分で手続きをするよりも代行業者へ依頼するほうが安く済むケースもあります。
前述した電子定款の手間を省くことはもちろん、代行業者によっては諸手数料を払わなくても良い業者である場合もあるので、自分で手続きするよりも2万円から3万円程度が安くなることもあります。
会社設立代行ができる専門家
会社設立代行ができる専門家は多くあり、どの専門家に何をお願いできるのか悩む人もいるでしょう。
会社設立代行を依頼できる専門家は以下のとおりです。
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 会社設立代行業者
各専門家は得意分野がそれぞれ違い、対応可能な業務が限られています。
一つひとつ詳しく解説していくので、会社設立代行を依頼するにあたっての参考にしてください。
税理士
税理士は、税金や決算などのいわゆる「税務」に関する専門家です。
会社設立をするための業務を税理士が行うわけではなく、税理士事務所と連携している司法書士や行政書士の窓口となっています。
会社設立にあたっての書類サポートをしてくれるので直接的に会社設立業務を担ってくれるわけではありませんが、税理士に依頼すると得られるメリットが複数あります。
税理士は決算や資金繰り、税金対策、事業承継などのさまざまな税務の面でアドバイスをしてくれるので、長期的に見ると非常に役に立ってくれる存在です。
株式会社の場合は、資本金や役員報酬、決算月の決め方など、会社設立をした後も税金面で大きく関わってくるので、会社設立後の税務処理も視野に入れて依頼すると良いでしょう。
司法書士
司法書士は、会社設立をするための「登記」の専門家です。
前述で挙げた会社設立に関わる複数の書類の作成、定款認証の代行、登記申請代行法など、会社設立をするための登記の手続きを依頼できます。
株式会社などの法人の場合は、登記の手続き代行ができる専門家は司法書士のみの独占業務となります。
登記申請の専門家なので安心して依頼でき、迅速な対応を期待できるでしょう。
もし株式会社にするか合同会社にするか悩んでいる場合は相談も気軽にできるので、最適な選択ができるでしょう。
登記後の税金関係や社会保険関連の届出を依頼する場合は司法書士では対応できないので、税理士や社会保険労務士など別の専門家へ依頼する必要があります。
行政書士
行政書士は、行政提出書類の専門家です。
会社設立の登記申請に関する業務は代行できないので、注意してください。
行政書士が対応可能な業務は、定款作成、定款認証、許認可届出の手続きです。
行政書士の事務所ごとに提供しているサービスは異なるので、定款作成だけ依頼できるところ、司法書士と連携して会社設立の代行までを行っているところなど、そのサービス形態はさまざまです。
許認可が必要な飲食や運送、建設業などの業種は申請代行を依頼できるので、とても便利でしょう。
社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険手続きの専門家です。
健康保険や厚生年金などといった社会保険関係の手続きや、労働基準監督署に必要な雇用保険関係届出、ハローワークへの労働関係の手続きが必要な許認可届出を代行できます。
許認可届出については、有料職業紹介事業と労働者派遣事業の許可申請が必要な場合、社会保険労務士のみが対応可能です。
社会保険労務士は、就業規則・労働者名簿・賃金台帳などの作成もでき、社会保険に関すること全般について相談・指導もできるので、税理士同様に長期的なサポートをしてくれる専門家です。
なお最初のうちは、社会保険労務士へ依頼をする機会が少ない可能性があります。
人材に関する専門家となるため、従業員数が増えてから依頼しても遅くありません。
会社設立代行業者
会社設立代行業者は、士業以外でもサービスを提供している会社も多くあります。
インターネットで「会社設立・代行」と検索するだけでもかなりの数がヒットするでしょう。
会社設立代行業者へ依頼する最大のメリットは、司法書士や税理士などの専門家へ直接依頼するよりも費用を大幅に抑えられることです。
代行業者によってサービス料金は異なりますが、依頼手数料を1万円以下で依頼できることもあります。
司法書士と連携している場合は、登記申請までの全ての会社設立業務を代行してもらうことも可能です。
連携していない場合は公証役場で定款認証手続きや法務局への登記申請は、自身で行う必要があるので注意してください。
また、会社設立代行業者の中には手数料が極端に安いサービスを提供しているところもあります。
そういった代行業者にはいくつか気を付けるポイントがあるので、次の項目で解説します。
0円の会社設立代行サービスについて
会社設立代行業者は、インターネットで検索するとさまざまな会社がヒットします。
中には設立代行の手数料0円をうたっている会社も少なくありません。
手数料が0円というのは利用者からすると大変喜ばしいことですが、注意点がいくつかあるので参考にしてください。
- 会社設立後に顧問契約することが決まっている
- 有料サービスに誘導するために無料サービス部分のみを宣伝している
まず前者についてですが、手数料0円の代行業者の運営者が税理士や公認会計士である場合です。
税理士や公認会計士は、顧問先企業を1社獲得するごとに毎月数万円の顧問料や1回十数万円の決算料で、年間に50万円ちかい売上が上がるようになっています。
そのため、会社設立代行手数料を極端に安くする代わりに設立後の顧問契約をする…いわゆる抱き合わせ販売というものを行っている可能性があります。
後者については、全ての利用者が安いサービスを受けられるわけではないケースがあるということです。
期間限定だったり、毎月○社限定や創業○周年記念だったりとさまざまなうたい文句をつけて定期的に行っている手法です。
このような手法は、書類作成を安く引き受けるが、実際にできあがった書類を提出すると修正が出てしまい余計な手間暇がかかってしまうというケースがあります。
最終的に専門家のアドバイスが必要となってしまい、逆に費用が高くなってしまうことも。
「書類作成無料+定款作成別途5,000円」などという場合は宣伝どおりの安さではないことも多いので、充分な注意が必要です。
会社設立代行業者を選ぶポイントは?
会社設立代行業者を選ぶ際に怪しい業者と契約することがないようにするには、以下の4つの選ぶポイントを参考にしてください。
- どこまで代行してもらえるか
- 電子定款に対応しているか
- 顧問契約などは必要か
- アフターサポートはどうか
それぞれを詳しく解説します。
どこまで代行してもらえるか
会社設立の代行は、どこまでの業務を代行してもらえるのかをしっかりと確認しましょう。
代行業者によって内容は異なり、定款作成を含めた登記申請全体の業務を代行してくれるところ、定款作成のみを代行しているところなどさまざまです。
依頼してから「これしかやってもらえなかった」と後悔し、結果として事業をおろそかにしながらも自分で遂行していく…ということのないようにしましょう。
会社設立をする流れは以下のように決まっているので、その手順のうちどこまでをカバーしてくれるかをしっかりと確認することが大切です。
- 会社概要の決定
- 定款作成
- 定款認証
- 資本金の払い込み
- 登記申請書類を作成
- 法務局へ登記申請
自分で対応できるところは極力やるようにし、代行してほしい部分の費用や設立までの速さで考えると比較的依頼先を決めやすくなるでしょう。
電子定款に対応しているか
定款の作成は登記申請において最も時間がかかる部分です。
定款は紙もしくは電子定款による提出が認められており、電子定款の場合は紙の際に必要な収入印紙代が不要となります。
会社設立にかかる費用のうち約5分の1が収入印紙代なので、電子定款に対応しているだけで大きなコストカットができるでしょう。
自身で電子定款を作成するとなると専用ソフトやICカードリーダライターなどの準備が必要になり紙で作成するよりも費用がかかってしまう可能性がありますが、電子定款に対応している会社設立代行業社であれば必要な物の準備を考えなくても良くなります。
どこまで代行してもらえるかも大切ですが、電子定款に対応しているかを確認することも代行業者の選別となるので、選びやすくなるでしょう。
顧問契約などは必要か
会社設立代行業者の中には、前述したように手数料を極端に低くする代わりに顧問契約が必要となるケースがあります。
費用が安い代行業者を見つけたと喜ぶのもつかの間、顧問契約があることを確認しておらず思わぬ出費になってしまったということにならないよう、代行にあたっての条件に顧問契約などがないかをしっかり確認しましょう。
税理士の顧問契約は、税務面でサポートが受けられるのは便利ですが、決算や確定申告のみの代行も可能です。
会社設立直後は必要性を感じなくても後から必要となり顧問契約を結ぶことも可能なので、契約内容が顧問契約必須となってしまうところを選ばないように気をつけましょう。
アフターサポートはどうか
「定款内容を変更したいが、法的に問題ないのかが不安」「会社設立後の税金対策はどうすれば良いのか」「資金調達はどこを頼れば良い?」などと、会社設立後も不安や疑問で心が埋め尽くされることがほとんどです。
特に初めての会社設立の場合は、どこまで行っても経営に不安は付きものでしょう。
そのため、会社設立後も専門家の知識に頼りたい場面が多くあるかと予想されます。
その都度専門家へ依頼するか検討することも良いですが、あまり頻繁にあると依頼するのも大変になってきます。
アフターサポートの内容は代行業者によって大きく異なりますが、会社設立後の定款変更の相談ができるのか、税務や労務で相談は可能なのかなど何のアフターサポートが可能なのかも、代行業者の選択時には重要です。
会社設立後に不安を抱えながら事業をしていては軌道に乗ることも難しいので、しっかりとサポート内容がどうなっているのかを確認しておきましょう。